今月の少女趣味こうなあ十六
河野 進
祈りと愛
神さまはどんなお祈りでもきいて下さるのし
よね子さんは神経痛ですわれない
長年わたしを大切にしてくれたのに
何もお礼ができなくて気の毒ですから
せめてわたしが病気を引きとって
天国に召して下さいとお祈りしていたのよ
そしたら座れるようになってのし
こんなうれしいことないのし
よね子さんにそっとたずねた
ほんとうに治ったのですか
おばあさんが熱心にお祈りして下さるから
安心させてあげたいと
目の前では無理をして座ります
姑と嫁とのやさしい心づくし
これこそ祈りがきかれたと言えないか
祈りは愛だから
病む
病まなければ
聞き得ない慰めのみ言葉があり
捧げ得ない真実の祈りがあり
感謝し得ない一杯の水があり
見得ない奉仕の天使があり
信じ得ない愛の奇跡があり
下り得ない謙遜の谷があり
登り得ない希望の山頂がある
一人
一言多く言うのはやさしく
一言少なく言うのはむつかしい
一歩多く歩くのはむつかしく
一歩少なく歩くのはやさしい
一握り多くあたえるのはむつかしく
一握り少なく与えるのはやさしい
一人信徒をつくるのはむつかしく
一人信徒をつまずかすのはやさしい
風見鶏
あの人はなんて暗い顔をしているのだろう
不思議がることはない
わたしの心が暗いのだ
なんて明るい顔をしているのだろう
不思議がることはない
わたしの心が明るいのだ
心の風見鶏が一日じゅう
休みなく廻っている
受けるより
主よ 受けるより与えるさいわいを
喜ぶより 悲しむさいわいを
審くより 許すさいわいを
羨むより 感謝するさいわいを
満ちるより 欠けるさいわいを
富むより 貧しさのさいわいを
健やかでたかぶるより 病んでへりくだるさいわいを
かなえられるより さらに祈るさいわいを
天国と地獄
賀川豊彦は突然 大きい声で言った
きみ 天国はどこにあるか知っているか
いいえ 知りません
人をほめるのは天国 悪口を言うのは地獄だよ
だから先生は悪口を言わないのですか
そんなことないよ にこっと笑った
深く印象に残っているから幾度でも書く
自戒のためにも
※ 賀川 豊彦(かがわ とよひこ、一八八八年
七月十日生まれ、一九六〇年四月二十三日死去)は、大正・昭和期のキリスト教社会運動家、社会改良家。
熊さん 今回も、河野進さんの詩です。いい詩ですので、二枚になってしまいました。
ご隠居 一人という詩なんか、ほんとにその通りやなあ。
会長さんに聞かさなあかんなあ。
虎さん ところで、これ天理教の教会の機関紙やなあ。
ご隠居 懐の広いところが、教会のいいところです。
虎さん わしんとこは、ふところ広いけど寂しがりやですねん。