◇他人をほめる人、けなす人  フランチェスコ・アルベローニ

◇他人をほめる人けなす人

◎われわれの欲求は際限なく大きくなる傾向がある。我われは障害や試練にぶつかり、それを克服することではじめて欲求を抑えることを学ぶ。価値感覚を与えれくれるのはこういうものである。ある物の価値は、それを取得するために支払われた代価に基づいている。

こういうタイプ(他人を認めない人)の指導者は、初期においてはかなり成功することが多い。部下たちが彼に認めてもらおうとして懸命になるからである。しかしやがてそのなかの賢明な者たち、有能な者たちは、状況を悟って彼の元を去って行く。彼のもとに残るのは凡庸なものばかりとなる。

◎弱くてもろい人物は善良だ、と我われはつねに思っている。ところがそうではない。精神病者、老人はしばしば攻撃的である。実際よりもよく見ようと努めているのは我われのほうである。

◎何の職業にせよ、それを専門とする者は控えめなものである。専門家としてのボーイは、客の背後をそうっと通り抜けるし、それと気づかれずに客のグラスに酒を注ぐ。これと反対に無能な女中ほど、主演女優のように挨拶をしながら入ってくる。その目的は、使え、給仕することではなく、自分を顕示することである

◎ヘブライのある伝説の伝えるところでは、三十六名の、正しく、謙虚で、知られざる人々が世界を破壊しかねない悪に拮抗しているからこそ、世界は存在しているという。ここに深い真実がある。