おつとめを楽しむ
この号をお読みいただいているときには、もう二十日の『総出のおつとめ』も終わっている。はたしてどんな『おつとめ』をさせていただき、どれだけの人が参拝してくれたか、不安と期待の入り交じった奇妙な心境でこの巻頭言を書いている。
『総出のおつとめ』を計画した最も大きな理由は、『おつとめ』の素晴らしさ、楽しさをもう一度再認させていただきたいということであった。『おつとめ』にはいろいろな意味があるが、一つには陽気ぐらしを具体化したものではないかということは前にも書いたことがあると思う。それぞれが違った鳴物を使いながら神様の地歌に合わせて、そしてそれぞれの鳴物が互いにに助け合ってを一つの調べを作り上げる。それは人間それぞれが様々な仕事を持ちながら、みなが力を合わせて住みよい世界をつくりあげるという陽気ぐらしの生き方をわかりやすくお教えいただいたのだと思う。
そしてもう一つもっと単純に『おつとめ』とは楽しいものではないかとも思うのである。初めておつとめをお教えいただいた時代、男女が同じ場所で踊ることはほとんど皆無であった。楽器を奏で、しかも合奏をするなどということもほとんどなかったであろう。そして今ほど娯楽というものを選べる時代でなかったことも確かである。娯楽と言えば、お盆に、お祭りの時しかなかったのではないか。そういうふうに考えていくと、いま『おつとめ』について感じている以上に、その時代の人々が『おつとめ』について感じた気持ちはもっと昂揚し、楽しいものではなかったかと思うのである。
正直に言えば、私たちの今もっている『おつとめ』にたいする感情は、楽しさよりも一つの儀式、修行のような感覚のほうが強いのではないだろうか。誤解を恐れずに言えば、『おつとめ』を初めてお教えいただいた時代には、今の若い人達がディスコ（かなり古いですが）で踊り、合奏を楽しみ、カラオケで歌う時と同様の楽しさがあったのではないかと思うのである。
そしてそれは必ず今もあるべきだと思うのである。こんなことを言い出すと不謹慎とのそしりを免れないかとも思うのであるが、おてふりを踊るものは、ディスコのお立ち台で踊っているのであり、鳴物をする者は合奏を楽しみ、歌を歌う者はカラオケではなく生バンド付きなのである。
そしていうまでもなく『おつとめ』は、『どのようなたすけするのもみなつとめ』とお聞かせいただく『つとめ』である。
おつとめはたのしいものである。親も子も孫も皆で一緒につとめさせていただくなら、その楽しみも倍加し、運動会や祭りで皆が一緒にするときの楽しさとあいまって、おつとめの本当の楽しさの一端でも感じさせていただけるのではないかと『総出のおつとめ』を計画した。 155年11�
「よくぼけとよふぼく」
別席を運ばせて頂き、存命の教祖から『さづけの理』を拝戴された人を「よふぼく」という。
当教会の『よふぼく』も現在、お蔭様でかなりの数にならせていただいた。
満席（別席を九回運ばせていただくこと）になり、『さづけの理』を戴かせていただく時には出来るだけ一緒に行かせて頂くことにしている。
そして神殿でのお礼の後、次のように話すことにしている。
「ただ今、真柱様を通して、存命の教祖より『さづけの理』を拝戴され、誠におめでとうございます。 さづけの理をいただくと言うのは、ちょうど人間が十月十日たって、母親の胎内より生まれ出るのと同じように、この『おぢば』で生きながら生まれ変わるということだと、お聞かせ頂いております。
それでは『さづけの理』をいただくというのは、どのように生まれ変わらせていただいたかと申しますと『さづけの理』の取り次ぎの仕方に鮮やかにお教え頂いているように、人をたすける人、人を喜ばせていただく人に生まれ変わらせていただいたということなのです。『さづけの理』は、病気の人に取り次がせていただき、御守護をいただくものですが、自分には取り次げません。毎月貴重な時間を割いて『おぢば』へ帰らせていただき、戴いたものは『末代の宝』とお聞かせ頂くが、自分には使えないのです。たとえ自分がどんなに重病であっても、自分の為に『さづけの理』は取り次ぐことは出来ません。理不尽な話だとは思いませんか。でもそれが生まれ変わるということなのです。心が生まれ変わるということなのです 今までは自分が大事、自分が幸せになりたい、自分が結構になりたいとばかり思っていた自分を、まず人をたすけさせていただく、人に喜んでいただくという心にならせていただく自分に生まれ変わるということなのです。
そして「『わかるよう胸の内より思案せよ、人たすけたら我が身たすかる』」とお聞かせ頂くように、そんな心にさえならせていただければ、自分のことは神様がかならず御守護下さるのです。『さづけの理』を真剣にお取り次ぎさせていただいたら、それは「ギブアンドテイク」だとか「情けは人のためならず」と言った皮相な話ではないことはすぐに分かります」と話させていただき、おさづけの取り次ぎを勧めさせていただく。
しかしながら、『さづけの理』を戴いた感激がそう長い間続くわけではない。「人に喜んでいただく」『よふぼく』は、知らぬ間に「自分が大事、自分が幸せになりたい」「よくぼけ」になりがちである。
『よふぼく』と「よくぼけ」よく似た語感ではあるが、大違いである。教祖の道具衆である『よふぼく』が、「よくぼけ」に戻らず、『よふぼく』であり続けるためには、不断の努力が必要だと思う。不断の努力と書けば、何とむつかしいことと思われるかも知れないが、何もむつかしいことはない。不断は普段につながる。普段の毎日毎日、あなたの側に教祖がおいで下さる事を忘れなければそれでよいのだと思う。
ｍ分教会の『よふぼく』のみなさん、そして何よりも会長さんﾍ。自戒の意味を込めて、皆様の心にもう一度問いかけたい。あなたは、教祖のひながたの道を心の定規として、毎日を通っておられますか。存命の教祖が目には見えないけれどいつもあなたの横におられ、あなたの心と行動をお見守り下さっていることを忘れていることはありませんか・・と。 １６１年７月
お礼とお願いのおつとめ
ｍ分教会に関係する人々が、毎日元気に通らせて頂いているお礼と、身上(病気)の平癒と事情の治まりをお願いして、九日ごとにお礼とお願いのおつとめをさせていただいてから、もう五年近くになる。
このおつとめも最初のころ、二回ほど抜けたことがある。忘れてしまったのだ。しかし二回ともその晩信者さんから、家族が急病になったのでお願いをしてほしいという電話がかかってきて、そういえば今日はお礼とお願いの日だったと気づかせていただいた。神様は受け取って下さっているのだなと思って、とてもうれしくありがたく、それからは忘れることなく、九日毎につとめさせていただいている。
お礼やお願いは、信者さんからの申し出もあるが、多くは会長が、聞かせていただいた病状や事情を記入してお願いしている。残念ながらまだ日参の人以外、今日はおつとめの日ですねと来られた方はないが五年近くになると、信者さん家庭のほとんどの家の誰かのお願いやお礼をさせていただいたと思う。
しかし、家にいる小六の息子はその日をとても嫌がっている。夕づとめ後、お願いのおつとめをさせていただくだけなので、時間としてはかかっても十五分ほどだが、彼にとっては大変苦痛らしい。
就任奉告祭早々、「おつとめも、にをいがけも苦手」と言ってヒンシュクをかった私だから、息子の気持ちもわからないではない。彼は一刻も早くテレビを見たいのだ。昨今の子供達の情報は馬鹿にならない「他の教会ではそんなことしてへんと、言ってたで」と、大教会の子弟練成会で仕入れた情報を片手に、何とか逃れようと必死だ。（他の教会はもっと熱心だと言ったら､沈黙したが・・・。）
嫌がる息子に、人のために願うことの大切さを伝えるのはなかなかに難しいし、何よりも邪魔くさいので今はただ親の権威の下で服従させている。
そんな息子を見ながら、彼が大きくなったとき、お礼とお願いのおつとめを嫌がっていた自分を覚えておいて欲しいと思っている。
そしてできるなら、その自分の体験から、人のことを祈ることの難しさを知り、自分のいいかげんさ、人を助ける心の無さを正直に見つめることのできる大人になって欲しいと思う。
私はそれが、成人するための第一歩だと信じている。
それはおまえ達親子だけだと言われたら、返す言葉もないが、しかし私は人間の多くは、私とそう変わらないと本当は思っている。いいかげんだからこそ、そんないいかげんな人間が、人を助けさせていただきたいという心に一瞬たりとなった時、そのことを、神様は大変お喜びいただくのだと思う。
自らのいいかげんさと、人のために祈ることの難しさ、それを自覚して初めて、自分の立っている場所と、教祖がお待ちくださっている場所との遥かな開きが見えてくる。「教祖のひながたをたどらせていただこう」と紋切り型で絶叫していても、自分の位置がわかっていないと、それはただのスローガンにしか過ぎない。教祖の偉大さは、自らの卑小さの実感があって、初めて本当になるものだと思う。
自分の中で教祖と自分との距離の遠さを本当に実感したとき、教祖への思慕と憧憬が心の底から湧いてくる。
それが、おさづけの理の取次ぎという、究極の人のために祈るという行為の中で、自分のいいかげんさを知り、その中でのほんの些細な自分の心の転換によって、神様の存在を体感させていただいた私の、ささやかな実感だ。
「ぼてきやなあ」と、私が父に子供の頃言われたことを息子に言いながら、息子に限らず、そして私も含めて、「今日はお礼とお願いのおつとめの日ですね」と、大勢の人がその日を忘れず帰ってくれるように成人させていただけますようにと、いつものお礼とお願いにそのことを加えておつとめをさせていただいた。
案の定息子には、「今日のおつとめはいつもより長かった」とぼやかれたのだが・・・。